パターンメイキング工房『オーヴ・モードスタジオ』代表 フリーパタンナー/モードエンジニアのコバヤシ_トシヒコです。
前回の記事では、アパレルパターン作成をパタンナーに依頼する際の流れや注意点についてご紹介しました。
▼初めてのパターン外注ガイド:フリーのパタンナーがその流れと注意点を解説
https://www.orvmodestudio.com/2024/10/18/pattern-outsourcing-guide/

今回の記事は、作成したパターン(型紙)の完成度を補正によって高めていく、効率的な修正プロセスのご紹介です。
パターン修正をできるだけ少なくして効率化するためのパターン作成依頼の方法や、パターン修正によって品質を最大限に向上させた「よいパターン」をお求めの方は、ぜひ参考にご覧ください。
注:この記事はあくまで「筆者はこう考えている」という意見の表明であって、読者に対して正しい答えを教えるものではありません。
「よいパターン」とはどのようなものか?についての私の考えは、以下の記事をご覧ください
▼「よいパターン」とは?服づくりのプロが言語化する
https://www.orvmodestudio.com/2024/05/18/what-is-excellent-apparel-pattern/

なぜ型紙の補正が重要なのか?
前回の記事でもお伝えした通り、パターンは2~3回のフィッティングと修正を経てようやく最終版が完成することも多いため、時間に余裕を持つことが大切です。
なぜなら1stパターン作成を依頼する段階で、パターン以外のデザインを構成する全ての要素が出揃っていることは稀であり、それらの要素の多くはパターンにも影響があるからです。
これは逆に言えば、パターン修正を少なくして効率化するためには、情報を可能な限り事前にパタンナーへ伝達する必要があることを意味しています。
よって1stサンプルの段階で、量産しても問題のないパターンを完成させようとすることは現実的ではありません。
あくまでパターン以外の全てのデザイン要素が出揃った上で、その要素に最適化したベストな型紙となるよう補正していくのが、パターンの品質を最大限に向上させることにつながります。
そして型紙の補正は、着心地・シルエット・バランスを整える重要なプロセスであり、最終的な製品品質を大きく左右します。
特に以下のような場合には補正が必須です:
- サンプルフィッティングでのサイズズレやシルエットの違和感
- 素材を変えたことによる伸縮性や落ち感の変化
- 着用ターゲットの体型に合わせた微調整
最大限に品質を高める効率的なパターン修正プロセス
ここからは私がよくご相談いただく
- 伸縮性のない生地を使用した
- ミシン縫製によるファクトリーメイドの
- シャープなタイトシルエットのアイテム
に限定したお話です。
このようなアイテムの多くは、見た目の客観的な美しさを意味する審美性と、着やすさ動きやすさを意味する機能性とはトレードオフの関係になります。
審美性<機能性か、機能性<審美性か。
審美性と機能性、そのどちらを優先するかは多くの場合ブランドコンセプトによって決まり、そうであればその優先順位に従ってパタンナーはパターンを設計します。
問題は、審美性と機能性のどちらを優先するかが決まっていない場合や、その両立をさせようとする場合です。
このような場合、パターン作成段階で型紙補正をスムーズにする方法は、デザイナーが具体的な数値によって主要な各部位のサイズを指定することです。
数値の指定があれば、パタンナーはその数値に従った上で機能性が最大化されるようなパターンを引くことが可能となるからです。
サイズ感の参考サンプルや参考パターンデータを用意することにも、サイズを指定するのと同様の効果があります。
優先順位も数値による指定もない場合の、パタンナーにとって合理的な選択
審美性と機能性の優先順位がなく、具体的な数値の指定もなく、それでいてトワル作成も行わずに1stサンプルの作成に入る場合はどうなるでしょうか?
その場合、機能性を優先して大きめのサイズにするのが、パタンナーにとって合理的な選択となります。
なぜなら、大きめにつくって小さくするのは簡単ですが、小さめに仕上がったものを大きくするのは難しいからです。
ここでいう「難しい」というのは、技術的に難しいという意味ではなく、最大限に品質を高めるための「判断が難しい」ということです。
1stサンプルをどのくらい小さくして審美性を向上させるかは、テープや安全ピンなどを使用する可逆的な方法によって行うことで判断が可能です。
それに対し、どのくらい大きくして機能性を向上させるかは、生地にはさみを入れて切り開く等の不可逆的な方法でしか判断できない場合があるからです。
優先順位も数値の指定もない場合の効率的なパターン修正プロセス
審美性と機能性の優先順位がなく具体的な数値の指定もない場合のパターン修正プロセスは、審美性<機能性なパターンの機能性を犠牲にして審美性を向上させるよりも、機能性<審美性なパターンの審美性を犠牲にして機能性を向上させるほうが判断が難しくなります。
だから具体的な数値の指定がない場合は、機能性を優先して大きめのサイズに仕上げるのがパタンナーにとって合理的、かつパターン修正時に効率的な選択となるのです。
このことを事前に理解しておけば、具体的な数値を指定する等の方法によって1stパターン作成以降のパターン修正で、効率的かつ最大限に品質に高められるのです。
品質を最大限に向上させた「よいパターン」をお求めなら、オーヴ・モードスタジオへお任せください
いかがでしたでしょうか?
当方ではアパレル用3D CADによるバーチャルトワルの作成を承っており、その画像納品時には、主要部位のパターンサイズも併せてお伝えさせていただいております。
それによって画像で審美性(見た目)を、サイズで機能性を、ある程度事前に把握することが可能となるようにしています。
審美性に加えて着やすさ動きやすさといった機能性も重視されるのであれば、パターン作成の依頼段階でサイズ感の参考サンプルや参考パターンデータを用意したり、具体的な数値によって各部位のサイズを指定する必要があります。
それが難しいようであれば、やはりシーチング等を使用したフィジカルなトワルの作成も併せてご依頼されることをお勧めいたします。
また、当方以外で作成されたパターンを当方にて修正する場合は、パターン修正ではなく新規にパターン作成を行う場合と同様のお見積もりとさせていただいております。
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