注:この記事はあくまで「筆者はこう考えている」という意見の表明であって、読者に対して正しい答えを教えるものではありません。
【結論】イノベーションとは、コストを減らして売り上げが増える活動
「儲け」と「利益」の違いについて解説した記事はこちら。
特にビジネスの世界で必要性が叫ばれている「イノベーション」。
一般的には技術革新と訳されることの多いこの言葉を、売り上げとコストとの関係で4象限に分類して整理することで、その意味と必要性とを明らかにすることを試みています。
以下でも登場する売り上げという言葉は、「価値」と読み替えてもらった方がイメージしやすいかもしれません。
1.コストを減らして売り上げが増える活動=イノベーション
上記の結論の通り、イノベーションとはコストを減らして売り上げが増える活動だと定義しました。
これはつまり、利益も儲けも増える活動であることを意味しています。
それを4象限の右上に位置づけしたのが以下の図です。
2.増やしたコスト以上に売り上げが増える活動=クリエーション
以下の4象限の左上に位置付けした通り、クリエーションとは増やしたコスト以上に売り上げが増える活動だと定義しました。
これはつまり、利益ではなく儲けを増やす活動であることを意味しています。
3.減った売り上げ以上にコストを減らす活動=オペレーション
以下の4象限の右下に位置付けした通り、オペレーションとは減った売り上げ以上にコストを減らす活動だと定義しました。
これはつまり、儲けではなく利益を増やす活動であることを意味しています。
そして最後の領域です。
4.コストを増やして売り上げが増えない活動=マスターベーション
残った最後の左下の領域、コストを増やして売り上げが増えない活動、つまり儲けも利益も減る活動はただの自己満足である、という意味でマスターベーションと定義しました。
はい、完全に言葉遊びです。
具体例と棒グラフによる図解
抽象的な話が続いたので、よりイメージしやすいように
- オペレーション
- イノベーション
- クリエーション
の順で具体例を挙げると共に、棒グラフによる図解で解説していきます。
・オペレーション
お店のレジ打ちや列車の改札が機械に置き換わって、無人になったことで人件費というコストが削減されただけならそれはオペレーション。
減った売り上げ以上にコストを削減できているなら、そのオペレーションは成功。
そして、削減したコスト以上に売り上げが減ったのなら、それはオペレーションの失敗。
・イノベーション
上記の機械化によってお店の回転率が上がったり、改札がスムーズになることで客数や客単価が増えて結果的に売り上げが増えたのなら、それはイノベーション。
いわばイノベーションとは、オペレーションの大成功とも言える。
・クリエーション
新しく機械設備を導入したことで商品単価や商品の供給量がアップし、その設備の導入コスト以上に売り上げが増えたのならそれはクリエーション。
追加コストをかけたにも関わらず売り上げが増えなかったのなら、それはクリエーションの失敗。
以上の分類から、イノベーションとはオペレーションとクリエーションのいいとこどりとも言うことができます。
クリエイティブなだけでは不完全な理由
なぜイノベーティブでなければならないのか、クリエイティブなだけでは完璧とは言えないのかがここから読みとれます。
つまり、まずコストを減らす必要があり、でも売り上げは減らないようにするという、一見無理ゲーに思えることが求められているのです。
その理由は、地球の資源は有限であり、世界的には人口は増加傾向にあるという事実に起因しています。
2015年に出版された書籍『限界費用ゼロ社会〜〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭』では、全人類が地球上で1年間に消費する量の資源を、再生産するのにはおよそ1年半かかると指摘されています。
この、資源の生産量と消費量とのアンバランスを解消しなければ、地球資源がいずれ枯渇することは明らかです。
(このあたりの環境問題については、また別の機会に取り上げます)
資源の消費量(コスト)を減らす必要があり、しかし人々が自分の生活水準(質)を下げることは容易ではない。
だから質を下げずにコストを減らすイノベーションが求められているのです。
加えて少子高齢化と人口減少が顕著な傾向にある日本では、生産年齢人口(働ける人の数)も減少しています。
これは、消費量よりも早いペースで供給量が減少することを示唆しています。
だからイノベーションによってコストを増やさずに生産性を向上させ、供給量が減少し過ぎないようにする必要があるのです。
あとがき
今回は内容をわかりやすく説明するため、時間軸の要素は省略しています。
実際の現実社会では、長期的に見るのか短期的に見るのかでも、その評価は変わってくるでしょう。
例えば短期的にはただの自己満足にしか見えない活動も、長期的には複利効果によってコストをかけなくても売り上げが増え続ける、なんてこともあるかもしれません。
なので実務の現場では、時間軸も加味してその費用対効果を算出する必要があります。
今回の記事で提示した図解などが、状況をクリアに見渡すためのお役に立てれば幸いです。
関連書籍
コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版
イノベーションという言葉には、世紀の大発明による華々しい成功というイメージを持っていました。
海運コンテナも確かに発明ではあるものの、それは極めて地味であり、しかし大幅なコスト削減と生産性の向上とを両立させたものとして取り上げました。
派手な成功だけが成功ではない、ということを教えてくれる一冊。
岡田斗司夫による紹介動画も。